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ネットスターズは2026年3月17日、東京・秋葉原にて、アジア市場を中心としたグローバル戦略や、パートナー企業との成長戦略、共創プロダクトの実例などを紹介するビジネスカンファレンス「StarPay Business Conference」を開催しました。
本記事では前編に引き続き、ステーブルコインやクロスオーバー決済など決済業界の最新動向に関するセッションの様子をお届けします。

Presentation2では、ネットスターズ 執行役員の梅元 建次朗が登壇し、「レジで使えるステーブルコイン決済」をテーマに、Web3決済の社会実装に向けた取り組みと、その技術的背景を解説しました。
梅元はまず、Web3領域での決済手段として、暗号資産の一種であるステーブルコインを紹介。法定通貨と連動しているステーブルコインは価値が安定しており、決済手段として利用しやすい設計となっています。
一方で、実際に店頭での決済として使おうとすると、「5つの壁」がある点も指摘。①受け取り側がアドレスを提示し、送り手側がチェーンを選択して送金するなど、ステップが複雑でレジ利用に適さないこと、②ガス代(手数料)の事前準備が必要であること、③ステーブルコインは複数のブロックチェーンで流通しており、送り先と同じチェーンを指定しないと送金できないこと、④不正なコインを受け取らないよう、しっかりとした資金の来歴確認が必要なこと、⑤送金確定までに署名や承認確認など複数のステップが必要で、確定待ちの時間が長いこと、といった点が、店頭での決済を阻んでいると説明しました。

ネットスターズはステーブルコイン決済の実装に向けて、この「5つ壁」をクリアするアプローチを取ってきました。①に関しては、ユーザーはウォレットアプリのQRコードを出すだけ、店舗側もそのQRコードを既存の決済端末で読み取るだけで決済を可能にし、操作の複雑さを解決。②に関しては、ガス代の準備・計算・支払いをシステム側で自動吸収し、ユーザーの事前準備の手間を解消しています。③では、ユーザーがチェーンやコインの選択を意識せずに決済できるよう、マルチチェーン・マルチコイン対応を進めています。④では、取引ステップを複数経路で検証することでリスクのある資金を自動排除し、決済専用のQRコードを生成することで、盗み見や誤送金のリスクを低減。⑤に関しても、仕組み側で決済成立を即時応答することで、通常のQRコード決済と同様の決済体験を提供しています。
梅元はこうした取り組みの実例として、2026年1月から2月にかけて実施された、羽田空港におけるステーブルコイン「USDC」を使った実店舗決済を紹介。さらに今後の展開として、対応コインやチェーンの拡充、導入店舗の拡大を段階的に進めていく方針を示しました。
続くセッションでは、一般社団法人キャッシュレス推進協議会 事務局長 常務理事 福田 好郎氏と、ネットスターズ 事業統括本部 決済事業部 副事業部長 小林 健介が登壇し、日本の統一QRコード規格「JPQR Global」について説明しました。
「JPQR Global」は、海外の統一QRコード規格と連携することで、訪日外国人が日本国内で自国のQRコード決済サービスを使ったスムーズな支払いを可能にするものです。ネットスターズは、この国際接続を担うスイッチングシステムの開発・提供を行っています。「JPQR Global」は2025年の大阪・関西万博で初導入され、現在はカンボジアおよびインドネシアの統一QRコード規格と接続しています。
「JPQR Global」のユーザーメリットとして福田氏は、普段利用している決済手段が特別な操作不要でそのまま使えること、支払い画面に円換算の金額が表示されるため支払い金額の把握が容易であること、アプリに支払い履歴が残るため外国でも安心して使えること、現地通貨への両替が不要であることを挙げました。加盟店メリットとしては、多様な訪日外国人の受け入れが可能になることや、両替した現金が足りない場合でも支払いができることから、売上機会の獲得につながることに言及しました。
「JPQR Global」は、各国の統一QRコード規格と接続することで、一気に複数の決済サービスが利用可能になる点も特長です。例えばインドネシアでは、統一QRコード規格「QRIS」と接続することで、インドネシア内のほぼ全てのデジタルウォレットが「JPQR Global」に対応しています。カンボジアでも、統一QRコード規格「KHQR」経由で中央銀行が提供する決済アプリと接続することで、カンボジアの全銀行の口座保有者が「JPQR Global」で支払いが行えるようになっています。
「このように、一つひとつのアプリではなく、面で接続していくのが『JPQR Global』の特徴です」(福田氏)

今後の展開として小林は、現在はQRコードを貼ったステッカーを店頭に置き、それをユーザーが読み込む静的MPM(店舗提示型)の決済方法であるところを、決済端末の画面に会計のたびに異なるQRコードを表示する動的MPMにも対応すべく開発を進めていることを紹介。また、福田氏は今後の接続先としてインドやタイをはじめとした東南アジア諸国と話を進めていると説明しました。
「料率などを日本側でコントロールできるよう各国と調整を進めています。『JPQR Global』は国の施策でもあるので、日本の決済インフラとして、価格の安定性やサービス品質の安定性を確保していきます」(福田氏)
また、日本国内の導入先を増やすことも重要だとし、例として2026年4月から導入を開始した浅草・浅草寺を紹介。国内店舗が導入しやすいよう、既存のMPM型QRコードに「JPQR Global」を接続し、QRコードを置き換えずに利用できるようにする開発も進めています。
最後に福田氏は、現在は訪日外国人が日本国内で自国の決済サービスを利用できるインバウンド決済のみの対応ですきが、今後は日本人が海外で日本の決済サービスを利用できるアウトバウンド対応も進める意向も示しました。これが実現すれば、インドネシアなら4,000万以上、カンボジアなら490万以上など、多数の海外加盟店でフリクションレスな決済体験が可能となります。
※参考
2025年大阪・関西万博にて国内初導入の「JPQR Global」をスイッチングシステム運用事業者として支援、第一弾はカンボジア:https://www.netstars.co.jp/news/8372/
「JPQR Global」にインドネシア統一QRコードが対応、大阪・関西万博で利用開始:https://www.netstars.co.jp/news/8447/
Session5では、日本空港ビルデング 取締役 専務執行役員 藤野 威氏、ネットスターズ 代表取締役社長CEO 李 剛、ネットスターズ 取締役COO 長福 久弘が登壇し、日本で初めてステーブルコイン「USDC」による店舗決済を実現した羽田空港でのサービス実証について紹介を行いました。
冒頭で李は、2025年7月に米国で制定されたステーブルコインの包括的な規制の枠組みを定めた「GENIUS(ジーニアス)法」に触れ、ルールが整備されたことで、それに則ったステーブルコインが決済や送金の現実的な選択肢になった点を指摘。また、日本が世界に先立ちステーブルコインを含む暗号資産に関する法整備を行っていた点も紹介し、「法律上はしっかりと位置づけされていますので、今はどう安全に広げていくかという段階です。単なる話題性だけでなく、実際に使える決済手段になる可能性は非常に高いとわれわれは考えています」と話しました。

ネットスターズは、伝統的なWeb2のシステムと、新しいWeb3のシステムがいきなり置き換わることは難しく、当面は共存していくという考えのもと、Web2とWeb3をつなぐ「Web2.5」という考え方を打ち出しています。
また、Web2とWeb3をつなぐ新たなゲートウェイ構想「StarPay-X」も紹介。「StarPay-X」は、ネットスターズがこれまでWeb2の世界で築いてきた事業基盤を出発点に、従来の決済・金融インフラとWeb3金融を接続するための基盤です。
「大事なのは技術的な先進性ではなく、実際に店舗で動く形にするという点です。その点、当社はこれまでマルチキャッシュレスゲートウェイとして、約70万の拠点で多様な決済手段を実装してきた実績があります。この積み重ねが、ネットスターズの強みの一つになると考えています」(李)

セッションでは続いて、Web3決済における羽田空港とネットスターズの取り組みについて紹介されました。両社は2026年1月から2月にかけて、羽田空港第3ターミナル内の2店舗で、日本初となるステーブルコイン「USDC」を利用した実店舗決済のサービス実証を実施。サービス実証では、暗号資産ウォレット「MetaMask」上に決済専用のQRコードを表示し、それを店舗側の決済端末で読み取ることで「USDC」による決済を提供しました。
本実証の検証項目として、藤野氏は以下の3点を挙げました。一つ目が、インバウンド旅行者における決済の選択肢拡大の効果。二つ目が、Web3技術とリアル店舗の接続。三つ目が、店舗の導入負担です。特に三つ目に関して、本実証では店舗側は既存の決済端末を使い、一般的なQRコード決済と同じ手順でQRコードを読み取るだけでよく、金額も円で入力するという負担の少なさを紹介。追加の端末導入や特別な手順が不要なことから、Web2決済のような感覚でWeb3決済を導入できたことが藤野氏から語られました。他方、ユーザーからは新しい決済体験として「楽しかった」という声や、暗号資産をそのまま利用できることから「精神的な安心感があった」との感想が寄せられたそうです。
今後の展開について、李は「将来的に空港だけでなく、インバウンド関連施設やクロスボーダー決済が発生するさまざまなシーンにステーブルコイン決済が広がる可能性があると思っています。その際は、実際に使えるサービスを作ることが重要だと考えています」と話し、決済事業者としてネットスターズが積み重ねてきた経験の重要性を強調しました。藤野氏は、「ステーブルコイン決済をより浸透させていきたい」と語り、羽田空港内の他店舗へもステーブルコイン決済を拡大する意向を示しました。また、空港のアプリ会員情報と紐づけることで決済以外での活用の可能性も示唆し、「他の空港や商業施設などとの連携も考えています」と話しました。
※参考
1月26日より、羽田空港第3ターミナル内店舗でステーブルコイン(USDC)による決済が可能に:https://www.netstars.co.jp/news/8957/
ネットスターズ、Web2とWeb3をつなぐゲートウェイ構想「StarPay‑X」を発表:https://www.netstars.co.jp/news/9129/
最後に李は、「新しい決済は当社だけで作ることはできませんので、パートナー企業の皆様と一緒にしっかりと社会実装していきたいと思います」とパートナー連携の重要性を語り、カンファレンスを終えました。
ネットスターズは今後もさまざまなパートナーとともに、先進的な領域での決済サービスの実装を進めてまいります。
※記事の内容は公表日時点のものです。