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ネットスターズとシンガポール発のWeb3企業Startale Group(以下、Startale)は2026年6月15日、Web3決済の普及に関する基本合意書(MOU)を締結しました。ネットスターズは、Web2とWeb3の金融世界をつなぐゲートウェイ構想「StarPay‑X」を推進しています。またStartaleは、SBIホールディングスと共同で日本円建てステーブルコイン「JPYSC」の開発を進めるなど、ブロックチェーン技術を活用したデジタル通貨の社会実装を目指しています。
Web3技術の社会への普及を推進するStartaleが描くステーブルコインの社会実装と、ネットスターズの決済基盤がどう交差するのか。Startaleで日本におけるサービス展開を担うStartale Japan CEO 手塚 孝氏と、ネットスターズ 取締役COO 長福 久弘に、ステーブルコインの社会実装やWeb2とWeb3が融合する未来について聞きました。
※参考: ネットスターズ、Startale GroupとWeb3決済の普及に向けた協業について基本合意
※以降、氏名・名称等の敬称略

―まずはそれぞれの経歴についてお伺いしたいと思います。
手塚:もともとは金融機関の出身で、外資系銀行で新規事業の立ち上げに携わりました。シティバンクでは投資信託解禁のタイミングに関わったり、新生銀行ではリテール事業を立ち上げたりと、いわゆる金融の現場を中心にキャリアを積んできました。
その後、キャリアをテクノロジー領域に広げ、Google Japanや「TikTok」を運営しているByteDanceに移りました。そこでは金融機関を中心とした法人向けに、テクノロジーソリューションを提供する営業チームを率いました。
金融とインターネットサービスの双方を経験する中で、「次の大きなイノベーションはブロックチェーン領域から生まれるのでは」と感じるようになりました。そのタイミングでStartale Group創業者の渡辺創太と出会い、「アジア発でGAFAMのような世界にパラダイムシフトを起こすビジネスを立ち上げる」という理念に共感し、Startaleに参画しました。
長福:私はもともとLINE Payの取締役としてサービスの立ち上げに関わり、その後ネットスターズに来ています。ですのでWeb2ど真ん中の世界をずっと見てきた側と言えます。
その中で、最近はQRコード決済、クレジットカード、電子マネーなどの垣根がなくなってきていると感じます。QRコード決済も、チャージはクレジットカードだったりしますよね。Web3の世界も同様で、例えば暗号資産ウォレットにステーブルコインをチャージする際に、チャージ方法はQRコード決済でもクレジットカードでも何でもよいのではと考えます。我々の目標は、このWeb2とWeb3の世界をつなげるところにあります。

―Startaleは、SBIホールディングスとともに信託型ステーブルコイン「JPYSC」の発行を発表するなど、日本でもWeb3事業の展開に力を入れていますが、事業内容について詳しく教えてください。
手塚:まずは、ステーブルコイン領域での取り組みです。SBIグループとの連携のもと、円建ての信託型ステーブルコイン「JPYSC」の発行準備を進めています。
現在、日本では資金移動型のステーブルコインは発行されていますが、同類型では1回あたりの送金額に100万円の上限が設けられています。一方で、JPYSCが想定する信託型ステーブルコインは、この制限がありません。資金移動業型に設けられている送金上限とは異なる制度設計が可能のため、企業間など大口の取引にも使える点が特徴ですね。やはりステーブルコインの普及には、toB領域でも使えるようにしていくことが重要だと思っているので、そのニーズに対応できるステーブルコインを開発しているところです。
―確かに企業間の決済にも利用できるとなると、普及が進みそうですね。それ以外の事業についても教えてください。
手塚:ブロックチェーン事業も手掛けています。現在、主に二つのチェーンを展開していて、一つがソニーグループと共同で運営しているブロックチェーン「Soneium」です。こちらはエンタメやクリエイター領域を含む、コンシューマー向けユースケースに強みを持つブロックチェーンで、ゲームやソーシャルアプリなどの基盤として使われています。もう一つがSBIホールディングスと共同開発している「Strium」です。こちらは金融に特化したチェーンで、暗号資産に限らず、将来的には株式やその他証券、コモディティーや指数などさまざまな資産のトークン化や取引への応用を見据えています。現在技術面でのPoCが終了し、実運用開始に向けて動いています。

その他、「Startale App」というアプリを通じて、ウォレットや資産管理、アプリ探索などを一体で利用できる環境の整備も進めています。従来の暗号資産ウォレットでは、シードフレーズや秘密鍵の管理、トランザクション署名、ガス代の理解などが、一般ユーザーにとって大きなハードルになっていました。「Startale App」では、Account Abstraction(AA:アカウント抽象化)などの技術を活用し、こうした複雑な操作をユーザーが意識しなくても使える体験へと近づけています。GoogleアカウントやLINEアカウントなどのソーシャルIDを使ったスムーズな利用開始もその一環であり、Web3の機能をWeb2アプリに近い感覚で使えるウォレット体験の実現を目指しています。

―今回、Web3決済の普及に関して、StartaleとネットスターズでMOUを締結しました。MOU締結に至った経緯について教えてください。
長福:きっかけは、ネットスターズが2026年1月から2月にかけて実施していた羽田空港におけるステーブルコイン決済のPoCです。このPoCでは日本で初めて、実店舗でドル建てステーブルコイン「USDC」を使った決済ができるということで、反響も大きかったですね。
手塚:ステーブルコインも最終的にはお金なので、実際に決済で使えるようになることが重要です。そこで我々としても、社会実装を見据えたパートナーを探していたときに羽田空港のPoCを拝見して。日本では、ステーブルコイン決済で本格的に事業化している金融機関や決済事業者はほとんどいない状態です。その中で、ネットスターズの実店舗におけるPoCはかなり先進的であり、一緒にやりたいとお声がけしました。
長福:実はWeb3の決済は、ネットスターズが何年も取り組んできた分野です。Web3基盤における決済データ処理の実証実験の成功についても2024年に発表しました。ただ、早すぎたのか当時の外部の反応は薄かったです(笑)。
その後、アメリカでステーブルコインの包括的な規制の枠組みを定めた「GENIUS法」が成立して大きく風向きが変わりました。そこから金融庁も含めて調整を進めて、最終的に羽田空港でのUSDC決済のPoCに至りました。
さらに4月には、Web2とWeb3をつなぐゲートウェイ構想「StarPay-X」も発表しています。Startaleはこの「StarPay-X」にも賛同いただいて、今回のMOU締結につながりました。

―手塚さんから見て、「StarPay-X」の魅力はどこですか?
手塚:「Web2とWeb3をつなぐ」という発想ですね。我々はWeb3企業ですが、エンドユーザーとの接点を重視しています。Web2もWeb3も関係なく、ユーザーが当たり前に使える環境を作りたいと考えているので、この「つなぎ込み」はまさに我々がパートナーに求めている部分です。
ステーブルコインユーザーは既に一定数いて、決済にステーブルコインを使いたいというニーズもある一方、そこに対するソリューションが提供されていないという状況があります。「StarPay-X」は、まさにそのソリューションを提供する、「Web2とWeb3の架け橋」を作る構想だと思っています。
―両社の連携により、どのような未来を描いていくのでしょうか。
手塚:一つ、決済と金融の融合があると思います。現在Web3の世界では、同じお金でも決済と金融で用途が完全に分かれている状況です。
金融側では、DeFi(分散型金融)と呼ばれる領域で、オンチェーン上で資産運用などを行う動きがあります。ここでは、投資家の選択肢を増やすという意味でも「JPYSC」の役割は大きいと思います。
長福:「JPYSC」は信託型のステーブルコインだからこそ、資産運用もできるし、支払いにも活用できるという点が特徴の一つですよね。
手塚:そうですね。一方、それだけだとユーザーは限定的になってしまう。そこで、法的な課題をクリアした上での話になりますが、将来的には決済とDeFiのソリューションを融合させ、経済的な価値をユーザーに還元できる世界が来ると、ユーザーが広がると考えています。決済用のウォレットにステーブルコインを入れておけば、利用実績やキャンペーン条件等に応じて自動でポイントが付与される、という世界観です。
長福:ポイントは、日本でのWeb3の普及を考える上で大きな切り口の一つだと思います。日本独特のポイント文化を活かしてユーザー還元を行うことは有効な視点だと考えています。
手塚:Web2の世界でユーザー還元を行う際は、オペレーションも複雑で事業者側にはそれなりのコストがかかります。Web3の技術を使い、一定の条件を満たせばスマートコントラクトで自動的にポイントが付与されるようなことができると、事業者側の負担もかなり軽減できると思います。

―最後に、Web3決済が普及するカギは何でしょうか?
長福:Web3の決済はWeb2と違ってイシュアがいない分、加盟店手数料が下がる可能性があります。店舗にとってメリットになる一方、サービス提供側としてはマネタイズの問題が出てきます。やはりビジネスとして成り立たないと、業界は広がらないので、その辺りも含め両社で色々な角度から話をしていきたいと思います。
手塚:ユースケースを作っていくことが重要ですよね。実際に店舗で使ってみないと分からない課題もあると思います。
長福:ユースケースには2種類あると思います。一つは「こんなことできたらいい」という発想。もう一つは「実際に使える」ものです。我々が重視しているのは後者で、例えば「パートやアルバイトの方でもスムーズに使えるか」、「レジでの操作が複雑にならないか」、「決済の処理速度に問題はないか」といったところまで落とし込むことで、初めてユースケースとしての意味が生まれると考えています。羽田空港のPoCでもこの辺りを意識して、現場に負担のかからないオペレーションを構築しました。
手塚:そこがネットスターズの強みですよね。Web3はどうしても“空中戦”になりやすいので、現場の課題感が分かっているのは大きなメリットだと思います。我々としてもPoC含めて並走させてもらい、一緒にユーザーや加盟店にとって使いやすいサービスを構築していきたいです。
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