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訪日インドネシア人の数は、コロナ明けから順調に回復し、2025年には過去最高の60万人超となりました。このような中で、インドネシアの決済用の統一QRコード「QRIS」による支払いニーズは高まっており、実際インドネシア人が多く訪れる店舗では、「QRISで払えますか?」と尋ねられることもあるといいます。
こうしたニーズに応えるため導入されたのが、「QRIS」に対応した「JPQR Global」です。導入から約1年が経過した現在、現場ではどのような変化が起きているのでしょうか。実際の導入店舗2店を訪ねました。
「QRIS」はインドネシアにおけるQRコード決済の統一規格です。2025年時点でユーザー数約5,700万人、加盟店数約4,000万店舗にのぼり、インドネシアでは多くの人が日常的に利用しているキャッシュレス決済手段です。そのため、インドネシアから日本を訪れる旅行者にとっても、普段使っている決済アプリで支払えるかどうかは重要なポイントです。
こうした中、2025年8月に日本の統一QRコード規格「JPQR Global」※と「QRIS」が接続され、大阪・関西万博にて初導入されました。これにより、訪日インドネシア人が日本国内でも「QRIS」を使って支払える環境が整い始めています。
※「JPQR Global」とは:「JPQR Global」は、日本の統一QRコード規格「JPQR」と諸外国の統一QRコード決済規格との相互連携を実現する仕組みです。これにより、訪日外国人が自国の決済アプリを使って日本国内でスムーズに支払いできるができるようになります。ネットスターズは、「JPQR」と海外のQRコード規格をつなぐスイッチングシステム運営事業者として「JPQR Global」のプロジェクトに参画しています。
参考:キャッシュレス推進協議会「JPQR Globalのご紹介」

今回訪問した1店舗目は、関東で7店舗を展開する本格インドネシア料理レストラン「CINTA JAWA CAFÉ」の渋谷店です。インドネシア人シェフが作る本場の料理は、国内外を問わず人気で、インバウンド客も多く来店するといいます。
渋谷店は、2021年に1店舗目を開店し、その後、2025年11月に同じビルの別フロアに2店舗目を開店しています。渋谷という訪日客の多いエリアに店舗を構えていることもあり、インドネシア人客から「QRIS」での支払いを求められる機会が多かったといいます。


「CINTA JAWA CAFÉ」は2025年9月に、当時まだ開店していなかった渋谷2号店を除く6店舗に「JPQR Global」を導入しました。「JPQR Global」の複数店舗における導入は初となります。
「CINTA JAWA CAFÉ」の運営企業である合同会社OZORA JAPANのエルマ スリスティアさんによると訪日客からのニーズを受け、「QRIS」が使える環境を整えたいと考えたことが導入の決め手だったそうです。

「JPQR Global」の利用状況は店舗によって異なるそうですが、観光客が多い渋谷や新宿、秋葉原といった店舗では日常的に利用されているとのこと。前述のように、「QRIS」で支払いたいというニーズは以前から多くありましたが、「JPQR Global」導入前は対応手段がありませんでした。そのため、日本円を持っていない来店客からスタッフに対し、「『QRIS』で送金するから飲食代を立て替えてほしい」と求められるケースもあったといいます。

「JPQR Global」導入後は、店舗で直接QRIS決済を受け付けられるようになり、利用客は普段使っているアプリのまま支払いが可能になりました。店舗側も個別のやり取りが不要となり、双方にとって利便性の高い環境が実現しています。
今後は、まだ「JPQR Global」を導入していない渋谷2号店でも導入を進める意向で、全店舗での展開を推進していくそうです。
訪問先2店舗目は、東京・原宿で2020年にオープンしたスペシャルティコーヒーカフェ「Kopi Kalyan Tokyo」です。インドネシア・ジャカルタで3店舗を展開する「Kopi Kalyan」の初の海外店舗で、厳選されたインドネシアのシングルオリジンスペシャルティコーヒーを提供しています。また、ムスリムフレンドリーな店舗でもあり、食事は全てハラル対応、店内にはムショラ(礼拝室)も設置されています。

原宿という場所柄もあり、訪日外国人観光客が多く訪れるという同店では、2025年8月に「JPQR Global」を導入しました。Country Directorのケニー エラワン チャヒャディさんによると、導入の決め手はやはり「QRIS」に接続していることだったといいます。
「インドネシア人は、複数のQRコード決済を使い分けている人が多いんです。統一QRコードである『QRIS』はインドネシアのあらゆるQRコード決済に対応しており、『QRIS』のQRコードが一つあれば、好きなQRコード決済サービスを選んで支払えます。例えば、Aペイの残高が足りなくても、Bペイに切り替えて支払いができる。そうした決済体験を提供できればお客様にとって便利だと考え、導入を決めました」(ケニーさん)
手持ちの現金やクレジットカード残高が心もとない場合にQRIS決済が利用されることも多く、特に若い世代にとっては使い慣れた支払い手段による安心感も大きなメリットになっているといいます。
「SNSで『QRISが使える』ということを宣伝してくれるお客様もいて、それがきっかけとなり来店してくださる方もいらっしゃいます。結果的に、『QRIS』に対応していることが集客にもつながっています」(ケニーさん)

オープン当初からの大きな変化として、現金支払いの割合が大幅に減ったといいます。キャッシュレス決済の比率が上がるにつれ、現金管理コストは削減されましたが、一方で課題となるのが導入にかかる手間や手数料です。その点、「JPQR Global」は紙のQRコードを設置するだけでよく、導入の手間やコストがほとんどかからないうえ、加盟店手数料もリーズナブルで導入しやすいといいます。
また、取引履歴がダッシュボードにリアルタイムで反映され、逐次確認ができることも、導入側として安心して利用できる点だとケニーさんは話します。

今後の展望として、東京・蔵前に店舗を構えるインドネシア料理専門の食堂「Warung SUKA」への導入を検討しているといいます。こちらは1階がハラル食材を扱うショップ、2階が食堂になっており、技能実習生などのインドネシア人が日常的に訪れるそうです。また、「Kopi Kalyan」の全国展開も視野に入っており、その際は支払い手段として、「JPQR Global」を導入したいとケニーさんは語ります。
インドネシアでは「QRIS」が日常的な決済インフラとして利用されています。訪日インドネシア人にとっても、慣れ親しんだアプリで支払えることは大きな安心材料です。
「CINTA JAWA CAFÉ」と「Kopi Kalyan Tokyo」の事例は、「QRISで支払いたい」という実際の来店客ニーズが存在すること、そして「JPQR Global」がそのニーズに応える有効な手段であることを示しています。今後、対応店舗が拡大することで、訪日インドネシア人旅行者の利便性向上と加盟店の業務負荷軽減の双方につながることが期待されます。
※記事の内容は公表日時点のものです。