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【Canton Foundationインタビュー前編】なぜ今、金融機関はブロックチェーンを採用し始めたのか——Canton Networkと次世代決済のリアル

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Web2とWeb3をつなぐゲートウェイ構想「StarPay-X」を推進するネットスターズと、金融機関向けブロックチェーン「Canton Network」のガバナンスを担うCanton Foundationは、2026年7月7日にWeb3決済の普及に関する基本合意書(MOU)を締結しました。
ブロックチェーン技術は、これまで暗号資産やDeFiといった領域を中心に発展してきましたが、足元では決済や日常取引といった実用シーンへの展開が加速しています。同時に、金融機関によるインフラ領域での活用も進み、ブロックチェーンは「金融」と「決済」の両面で進化を遂げつつあります。

本記事では、Canton FoundationのAPAC責任者であるトーマス チョウ氏へ、ネットスターズ 取締役COO 長福 久弘が実施したインタビューを前後編でご紹介。前編では、「Canton Network」の実態や、金融機関に選ばれる理由について掘り下げました。

※以降、氏名・名称等の敬称略

Canton Foundation APAC責任者 トーマス チョウ氏(左)とネットスターズ 取締役COO 長福 久弘(右)

700以上の組織が稼働する金融機関向けブロックチェーン「Canton Network」

長福:まずはトーマスさんの経歴について教えてください。

トーマス:私はもともと、METAやTikTokといったWeb2の企業で営業やマーケティングの事業開発を担当していました。その後、暗号資産取引所のOKXにおいて、ウォレット事業のグローバルマーケティング責任者を務めました。また、2025年の大阪・関西万博におけるデジタルウォレットの普及にも携わった経験もあるので、実は日本との関わりもあります。そこからCanton Foundationに参画し、現在はAPACにおける事業拡大を主導しています。

長福:Canton Foundationはブロックチェーンネットワークである「Canton Network」を管理されていますが、金融機関が実運用するインフラとして、どのような点が評価されているのでしょうか。単なるPoCではなく採用が進んでいる背景を教えてください。

トーマス:「Canton Network」は、金融機関向けに設計されたブロックチェーンネットワークです。開発は米国のDigital Asset社によって行われ、10年以上にわたり金融インフラ領域での開発実績を持っています。

「Canton Network」自体は2024年に正式ローンチし、現在約700の組織がネットワーク上で稼働しています。また、ゴールドマン・サックスやHSBCホールディングスなど、世界トップレベルの金融機関が参加しています。

Canton Foundationは、このネットワークのガバナンスを担う非営利組織です。例えば「Canton Network」を道路だとすると、その管理や交通ルールの策定を担っているのがCanton Foundationになります。特定の企業がネットワークをコントロールするのではなく、皆が公平に使えるインフラとしてルール整備などを行っています。

長福:約700の組織が稼働しているとのことですが、ここまで金融機関が参加している理由はどこにあるとお考えですか。他のブロックチェーンと比較した際の優位性があれば教えてください。

トーマス:大きく三つあります。
まず一つ目が、「クロスチェーンの安全な取引」です。通常、異なるブロックチェーン間の資産移動にはブリッジなどのリスクが伴いますが、「Canton Network」ではアトミックトランザクション(同時履行)により、安全に直接的な取引を実現しています。

二つ目は「金融機関が使えるプライバシー設計」です。従来のブロックチェーンは透明性が強みですが、金融機関にとっては取引内容が全て公開されることはリスクになります。「Canton Network」では、必要な相手にのみ情報を開示する「選択的開示」が可能で、コンプライアンスと機密性を両立しています。

三つ目は「実運用レベルのスケール」です。単なる実証実験ではなく、すでに大規模な金融取引がオンチェーン上で稼働しています。例えばブローカレッジ市場では、3,000~4,000億ドルの大規模な取引が日常的に処理されており、実用性が証明されています。

「分散」ではなく“実運用性”——Cantonが選ばれる理由

長福:Canton Foundationとネットスターズは、Web3決済の普及に向けてMOUを締結しました。その中で、「Canton Network」が掲げる価値は、「StarPay-X」のような決済領域とどのように接続されていくとお考えでしょうか。

トーマス:我々はブロックチェーンの技術を日常の決済に溶け込ませることを目指しています。たとえ技術的な優位性があっても、店舗や消費者がスムーズに使えるオペレーションやシステムを構築できないと日常利用にはつながりません。その点、ネットスターズは羽田空港などで実店舗におけるステーブルコイン決済のPoCを実施した実績があります。さらに、約70万アカウントの加盟店ネットワークを持っている点も魅力です。

また、法規制への知見もWeb3の普及には必要です。日本の規制当局や機関とコミュニケーションを取る中で、やはりネットワークの安全性が求められるので、その点でも長年日本でキャッシュレス決済を推進してきたネットスターズと連携していきたいと思います。

さらに、Web3決済の普及という面では、日本国内に留まらず、アジアを中心に各国とのクロスボーダー決済についても知見の共有をしたいと考えています。我々は現在金融機関間の取引処理を行っていますが、それは第一フェーズです。そして第二フェーズとして、金融機関の顧客に対してオンチェーン化された金融ソリューションを提供することを目指しています。その延長線上に決済があると考えており、「StarPay-X」と連携することで、「Web3を意識せずに使える」といった世界観を共に作っていきたいです。

※参考:ネットスターズ、Canton FoundationとWeb3決済の社会実装に向けた協業について基本合意

長福: 我々としても、Canton Foundationとの連携によって、従来の決済の延長ではない新しい金融サービスの可能性が広がると考えています。特に“オンチェーン化された金融”が一般ユーザーに届くまでの道筋について、どのように見ていますか。

トーマス:我々は現在、各国で金融のオンチェーン化を進めています。日本でも同様にオンチェーン化を進めることで、従来よりも効率的な新しいサービスを提供できると考えています。

また、「Canton Network」の特徴の一つが、各参加者が独立性を保ちながら一つのネットワークとしてつながっている点です。少し話は逸れますが、「Canton」の名前の由来は、スイスの行政区画を表す「canton」から来ています。スイスは複数のcantonがそれぞれ独立したガバナンスや制度を持ちながら、一つの国家として統合されている特徴があります。「Canton Network」はこの構造をモデルにしており、各国、各社の独立したシステムを維持したまま連携可能な点が大きな強みです。

「Canton Network」では、各参加者が独立性を保ったまま一つのネットワークとしてつながっている点が特徴

また、先ほど話した通り、「Canton Network」は必要な相手にのみ情報を開示する「選択的開示」が可能です。例えば、会社の給料をブロックチェーン上で受け取る際、従来のチェーンでは全ての参加者に取引データが公開されてしまいます。一方、「Canton Network」は本人と経理担当者のように、関係者のみに取引データが共有されるような仕組みを構築しています。こうしたプライバシー保護の仕組みは、金融機関にとって重要です。

将来的には、一般ユーザーが意識せずに、決済を含めたWeb3の金融サービスを日常使いできるようになることを目指しています。そのためには、プライバシー保護や規制の遵守が重要になってくるので、各国の規制当局とも密にやり取りしつつ、新しい金融基盤を作っていきたいと思います。

※記事の内容は公表日時点のものです。