NETSTARSBLOG

【Canton Foundationインタビュー後編】ブロックチェーンは“意識されないインフラ”になるのか——CantonとStarPay-Xが描く未来

公開日:

Web2とWeb3をつなぐゲートウェイ構想「StarPay-X」を推進するネットスターズと、金融機関向けブロックチェーン「Canton Network」のガバナンスを担うCanton Foundationは、2026年7月7日にWeb3決済の普及に関する基本合意書(MOU)を締結しました。
Canton Foundationへのインタビュー後編では、ブロックチェーンが直面する課題をどのように乗り越え、実社会に適用されていくのか、そして「Canton Network」と「StarPay-X」の連携によって実現する将来像を掘り下げます。

※前編はこちら: https://www.netstars.co.jp/blog/9402/

※以降、氏名・名称等の敬称略

Canton Foundation APAC責任者 トーマス チョウ氏(左)とネットスターズ 取締役COO 長福 久弘(右)

ブロックチェーンの限界をどう乗り越えたのか——トリレンマの実際

長福:金融インフラとして導入を検討する際、「分散性」、「セキュリティ」、「スケーラビリティ」のバランスは重要な判断ポイントになります。「Canton Network」はこの課題にどのように対応しているのでしょうか。

トーマス:まず「分散性」の部分では、従来は取引をする際に全ノード(ブロックチェーンネットワークに参加し、トランザクションの検証やデータの保存・同期を行うコンピュータや端末)が同一の台帳を持ち、さらに全ノードのコンセンサスが必要で、それにより取引スピードが落ちてしまう問題がありました。一方「Canton Network」では、各機関が独自の台帳を保持しています。また、「スーパーバリデーター」と呼ばれる複数の独立した機関が運用する「Global Synchronizer」という仕組みがあり、取引に順序をつけることでスピードを確保しています。

「セキュリティ」に関しては、必要な取引データだけを共有することで安全性を確保しています。Daml(Digital Asset Modeling Language)という独自のスマートコントラクト言語を使うことで、「誰が何を見られるか」を定義し、取引内容は暗号化によって保護されます。

最後に「スケーラビリティ」ですが、従来のブロックチェーンでは全ノードが全トランザクションを検証しているのに対し、「Canton Network」は取引に関係するノードだけが検証を行う設計になっています。これにより並行処理が可能となり、スケーラビリティを確保しています。

この三つのバランスを取ることでブロックチェーンの「分散性」、「セキュリティ」、「スケーラビリティ」の三つの要素を同時に最大化することが困難であるというトリレンマを解消し、安定したネットワークの稼働を実現しています。実際、金融機関向けのインフラを提供している米国企業Broadridge Financial Solutionsも「Canton Network」を利用しており、月に数千億ドルが取引されています。

「Canton Network」は取引に関係するノードだけが検証を行い、「Global Synchronizer」の仕組みで取引に順序をつけることでスピードを確保しています

長福:実際に数千億ドル規模の取引が稼働しているという点は、インフラとしての信頼性を示す重要な指標だと思います。「Canton Network」は2026年4月、みずほフィナンシャルグループ、野村ホールディングス、日本証券クリアリング機構と共同で、日本国債を活用したデジタル担保管理の実証実験を開始することを発表しましたが、具体的にどのようなことが可能になるのでしょうか?

トーマス:まず国債というものについて少し解説したいと思います。国債は資金を調達するための債権で、銀行や保険会社、年金機構などが大量に保有しており、日本の金融システムを支えるものになっています。

現在、国債の取引や決済には紙ベースの手続きなど、レガシーシステムが残っており、数日かかることが一般的です。こうした非効率的な現状は日本だけでなく、他国も同様なのですが、これをデジタル化することで、24時間356日リアルタイムの取引や決済が可能となります。これにより、資金の回転が早くなる、流動性が向上する、新しい金融サービスが生まれるといった変化が起こります。

この話は一見すると機関投資家など限られた人にだけ関係するように思えますが、実は一般消費者にも影響があります。例えば将来的に、日本に訪れたインバウンド客が自国のウォレットからステーブルコイン決済ができるようになる可能性があります。その裏側では、デジタル化された国債が担保としてステーブルコインの価値を支える構造です。

そして、ネットスターズの「Starpay-X」は、金融の上流にある「Canton Network」のようなインフラと、下流の店舗・消費者をつなぐ役割を持っていると考えます。

資金は“リアルタイム化”するのか——金融と決済の接続

長福:ありがとうございます。国債のデジタル化によって資金流動性が上がるとのことですが、これは中小企業の資金繰りにも直接影響するという理解になりますか。

トーマス:ステーブルコインを活用することで、入金などのスピードを向上することも可能です。現状、売上金の入金までN+15、N+30といった日数がかかっているところ、ステーブルコインによってN+0といった世界も実現可能だと考えています。そのためには、ステーブルコインの信頼性を担保するものとして、国債を含めたデジタルアセットが重要になります。

そして、金融機関と中小企業をつなぐインフラを作っていくことが一番大事だと考えています。この部分をネットスターズとの連携で実現できたらと思います。

長福:ネットスターズはミッションとして、「お金の流れを、もっと円(まる)く」を掲げています。その観点で見ると、「Canton Network」が担う金融インフラと、「StarPay-X」が担う決済領域は補完関係にあると感じています。

トーマス:そうですね。我々が担うのは流動性の部分です。金融アセットの流動性であったり、担保の流動性であったり、そこをなめらかにすることで、取引のコストが下がったりスピードが上がったりといったことを実現します。
ただ、既存のシステムをまったく別のものに変えるのではありません。金融のオンチェーン化は、全てが一気に変わるのではなく、徐々に進んでいくものだと考えており、「Canton Network」も既存の金融システムと融合していくビジョンです。

長福:「Canton Network」と「Starpay-X」が連携することで、どのような未来を描いていますか?

トーマス:まず、「Canton Network」のネイティブトークンである「Canton Coin」やネットワーク上に乗っている既存のステーブルコインを日本の加盟店で使えるようにすることが可能になると考えています。また、今後発行されるステーブルコインもネットワーク上に乗れば、「Canton Network」が提供しているプライバシー保護、スピード、安全性といったメリットそのままに店舗に導入できるようになります。

今後、Web3技術を活用したさまざまな金融サービスが登場すると思います。そういう世界が到来したときに、金融インフラとしてユーザーが意識せずに日常使いできるサービスを、ネットスターズとともに創出していけたらと考えています。

※記事の内容は公表日時点のものです。