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USDTは、米ドルとほぼ同じ価値を保つことを目指して設計されたステーブルコインです。ネットスターズは2026年8月、ローソンゲートシティ大崎アトリウム店で、USDTを含む「Stablecoin Pay」の店頭決済実証実験を行いました。
世界では暗号資産の売買だけでなく、送金や決済など幅広い用途で利用されており、2026年8月28日時点で時価総額は約1,834億ドル。ステーブルコインでは最大、暗号資産の時価総額ランキングでもビットコイン、イーサリアムに次ぐ3位となっています。
本記事では、ネットスターズが実証実験で扱ったUSDTについて、その基本的な仕組みや特徴、世界で利用されている背景、利用時の注意点などを紹介します。
※参考:ローソン店舗における「Stablecoin Pay」の店頭決済実証実験を8月17日に実施
【この記事のサマリー】
・USDTは、米ドルとの価値の連動を目指して設計された、世界最大規模のステーブルコインです。
・暗号資産取引だけでなく、送金や決済など幅広い用途で利用されています。
・複数のブロックチェーンに対応する一方、ディペッグや発行体への依存、送金時のネットワーク選択などには注意が必要です。
・ネットスターズでは「Stablecoin Pay」の店頭決済実証実験で、USDC、JPYCとともにUSDTによる決済を検証しました。

USDTは、米ドルの価値に連動するよう設計されたステーブルコインで、Tether International, S.A. de C.V.によって発行されています。本記事では、同社を「Tether(テザー)」と表記します。一般にはUSDT自体を「Tether」と呼ぶこともあります。
つまり、厳密には「Tether=発行体」「USDT=Tetherが発行する米ドル連動型ステーブルコイン」という関係です。
「USDT」は、このステーブルコインを識別するために一般的に使われているティッカー(識別記号)です。株式に銘柄コードがあるように、暗号資産やステーブルコインにもそれぞれを識別するための記号があります。なお、Tether公式では「USD₮」と表記されています。
Tetherは2014年にUSDTの提供を開始しました。USDTは基本的に「1USDT=1米ドル」となることを目指しており、Tetherは発行するUSDTについて準備資産によって100%裏付けられています。
| 項目 | 内容 |
| 名称 | USDT |
| 一般的な名称 | Tether |
| 発行体(企業) | Tether International, S.A. de C.V. |
| 発行開始 | 2014年 |
| 連動する資産 | 米ドル |
| 基本的な価格 | 1USDT=1米ドル |
| 時価総額 | 約1,834億ドル(2026年8月時点) |
| 主な用途 | 暗号資産取引、送金、決済、DeFiなど |
一般的な暗号資産との大きな違いは、価格の安定を目的としている点です。
たとえば、1BTCの価格は市場環境によって大きく上下します。一方、USDTは1米ドル前後で推移することを前提としているため、「ブロックチェーン上で扱えるデジタルな米ドル」に近い感覚で利用されています。
USDTは、基本的に「1USDT=1米ドル」となることを目指して設計されています。では、なぜ価格を1米ドル前後に保ちやすいのでしょうか。
ポイントの一つが、USDTの発行量に応じてTetherが保有している「準備資産」です。
準備資産とは、発行したUSDTの価値を支えるために保有している資産のことです。Tetherは、米国債を中心とした現金・現金同等物のほか、金、ビットコイン、担保付融資などを準備資産として保有し、発行するUSDTを100%裏付けていると説明しています。
これはUSDTを発行する一方で、それに見合う価値の資産をTether側で保有しているイメージです。この仕組みが、「1USDTは1米ドル程度の価値がある」という市場からの信頼を支える要素の一つです。
たとえば、市場価格が1米ドルを下回った場合は、条件を満たす顧客がUSDTを購入してTetherを通じて償還し、1米ドルを上回った場合は、Tetherから取得したUSDTを市場で売却しようとする動きが生じます。
こうした発行・償還や市場での売買が、USDTの価格を1米ドル付近に保つ要因の一つです。
ただし、常に「1USDT=1米ドル」が保証されているわけではありません。市場環境や需給の変化などによって、一時的に1米ドルを上回ったり下回ったりすることもあります。
USDTは現在、ステーブルコインの中で最大の市場規模を持っています。なぜこれほどまでに利用が広がっているのでしょうか。主な理由を見ていきましょう。
1.価格が比較的安定している
最大の特徴は、やはり価格の安定性です。
暗号資産市場では、ビットコインなどの価格が短期間で大きく動くことがあります。そのため、価格変動の影響を一時的に避けたい場合などに、米ドルと連動するUSDTが利用されています。
取引だけでなく、「米ドルとの連動を目指す資産をブロックチェーン上で移転する」という用途にも適しているコインです。
2.世界的に流通量が多い
2026年8月時点でUSDTの時価総額は約1,834億ドルに達し、世界最大のステーブルコインとなっています。暗号資産全体でみても時価総額3位です。
多くの海外取引所で「BTC/USDT」「ETH/USDT」といった取引ペアが設けられており、暗号資産市場における基軸通貨のような役割も担っています。
流通量が多いことで、さまざまな取引所やウォレット、サービスで利用しやすい環境が整っています。こうした利用環境の広さも、USDTが世界で普及している理由の一つです。
3.複数のブロックチェーンで利用できる
USDTは、特定の一つのブロックチェーンだけに存在するものではありません。
USDTは、EthereumやTRON、Solana、TON、Aptos、Avalancheなど、複数のブロックチェーン上で発行されています。
そのため、利用するサービスや目的に応じて異なるネットワークの選択が可能です。
ブロックチェーンごとに、送金速度や手数料、利用できるサービスは異なります。USDTが複数のブロックチェーンに対応していることで、用途に応じて使い分けやすくなっています。
USDTは暗号資産の売買だけでなく、さまざまな用途で利用されています。代表的なのが、海外送金です。
従来の国際送金では複数の金融機関を経由することがありますが、ステーブルコインを利用すれば、ブロックチェーンを通じてデジタル資産の直接移転が可能です。
また、暗号資産取引所間での資金移動や、DeFi(分散型金融)サービスでの取引にもUSDTは広く利用されています。
さらに近年は、「投資や取引に使うもの」だけではなく、商品やサービスの代金を支払う決済手段としてステーブルコインを活用する動きも広がっています。
ネットスターズがローソン店舗で実施した実証実験も、その一例です。2026年8月17日に実施した実験では、既存のPOSレジと複数のステーブルコイン決済に対応するゲートウェイサービス「Stablecoin Pay」を連携させ、USDT、USDC、JPYCによる店頭決済を検証しました。USDTについてはSolana、Morph、Polygonの各チェーンを利用し、決済速度や利用者の操作性、店舗オペレーションへの影響などを確認しています。
USDTには、ステーブルコインならではの特徴があります。
価格変動を抑えながらデジタルで価値を移転できる
ビットコインなどの暗号資産は、送金している間にも価格が変動する可能性があります。
一方、米ドルとの連動を目指すUSDTでは、ビットコインなどと比べて価格変動が小さい傾向があり、送金中の価格変動リスクを抑えやすい点が特徴です。ただし、価値の安定が保証されているわけではありません。
送金や決済といった用途でステーブルコインが注目される大きな理由です。
国境を越えて利用しやすい
USDTはブロックチェーンを通じて国境を越えて移転できるため、海外送金や国際決済での利用が広がっています。ただし、利用できる国・地域やサービスは法令や事業者の規約によって異なります。
特に、自国通貨の価値が不安定な地域や、米ドルへのアクセスが限られている地域では、デジタルな米ドル相当の資産として利用されるケースもあります。
利用できるサービスやネットワークが多い
長い運用実績と大きな流通量があることから、USDTに対応する取引所やウォレット、ブロックチェーン関連サービスは世界各地に存在します。
こうした利用環境の広さも、大規模な流通を支える要因となっています。
一方、USDTにはステーブルコイン特有のリスクもあります。「価格が安定している=リスクがない」というわけではないため、注意が必要です。
1米ドルとの連動が必ず保証されるわけではない
USDTは1米ドルとの連動を目標としていますが、市場で取引される価格は需給によって変化します。
市場が大きく混乱した場合などには、ステーブルコインの価格が連動対象からずれる「ディペッグ」が発生し、一時的に1USDTが1米ドルを上回ったり下回ったりする可能性があるためです。
米ドルとの連動を目指しているものの、法定通貨ではなく、価格変動やディペッグの可能性があることを理解しておく必要があります。
発行体に依存する部分がある
USDTは、Tetherという民間企業によって発行されているステーブルコインです。
そのため、準備資産の管理や発行・償還、法規制への対応などについて、発行体に依存します。
また、USDTには、発行体であるTetherが特定のアドレスにあるUSDTを凍結できる仕組みがあります。Tetherは、法令への対応や不正利用が確認された場合などに、対象となるUSDTの移転を制限することがあります。
こうした仕組みは、マネーロンダリングや犯罪への対策につながる一方で、発行主体が存在しないビットコインなどの暗号資産とは異なる特徴でもあります。
送金するブロックチェーンを間違えない
同じ「USDT」でも、Ethereum上のUSDTとSolana上のUSDTなどでは利用するネットワークが異なります。
送金元と送金先で対応するネットワークが一致していることを確認しなければ、送金先に反映されず、資産を回収できなくなる可能性があります。
USDTを利用する際には、「USDTだから同じ」と考えるのではなく、どのブロックチェーン上のUSDTなのかを確認することが重要です。
これまでTetherは、独立した第三者会計事務所BDO Italiaによる四半期ごとの保証報告(アテステーション)を公表してきました。保証報告では、特定の時点における準備資産などが確認されます。
さらに2026年8月、TetherはTether International, S.A. de C.V.の2025年12月期の財務諸表に対する初のフル監査を完了したと発表しました。監査を担当したのは、大手会計・監査ネットワークKPMGの米国組織「KPMG U.S.」です。
Tetherの発表によると、KPMG U.S.はTether Internationalの財務諸表について「無限定適正意見(unqualified opinion)」を表明しました。これは、重要な点において財務諸表が適正に表示されていると監査人が判断したことを意味します。
また、Tetherの発表によると、監査済み財務諸表では、2025年12月31日時点で準備資産が関連する負債を68億1,400万ドル上回っていました。
これまでの四半期ごとのアテステーションに加え、財務諸表全体を対象とする監査が行われたことは、Tetherの透明性を確認するうえで大きな動きの一つです。
USDTは、「1USDT=1米ドル」を基本として価値が安定するよう設計されたステーブルコインです。
2014年の登場から10年以上を経て、現在ではステーブルコインで最大の市場規模を持ち、暗号資産取引だけでなく、送金や決済など幅広い分野で利用されています。複数のブロックチェーンに対応し、世界的な流通量が大きいことはUSDTの特長です。
一方で、発行体への依存や価格が連動対象からずれる「ディペッグ」、利用するネットワークの違いなど、ステーブルコインならではの部分にも注意が必要です。
2026年にはTetherが初のフル監査を完了するなど、透明性を高める動きも進んでいます。
日本でもステーブルコインを取り巻く制度や決済環境が整備され始めています。「暗号資産を売買するためのもの」というイメージだけでなく、ステーブルコインが送金や日常の支払いなどにどのように使われていくのか。USDTは、その変化を知るうえでも代表的な存在といえるでしょう。
※記事の内容は公表日時点のものです。